2026年08月10日
お盆の帰省で、親の変化に気づいたとき
お盆で久しぶりに実家に帰り、親の顔を見て「ずいぶん痩せたな」「歩くのがゆっくりになったな」と、ふと胸がざわついた——そんな経験はないでしょうか。離れて暮らしていると、日々少しずつ進む変化が、年に数回の帰省でまとめて目に飛び込んできます。だからこそ、驚きも大きくなります。
その驚きの先で、多くのご家族が言葉にしにくいまま抱えるのが、「この先、どこで過ごしてもらうのがいいのだろう」という問いです。この記事では、在宅での看取りという言葉を入り口に、住み慣れた家で最期の時間を過ごすとはどういうことか、そのときご家族に何ができるのかを、札幌市東区で訪問看護に携わる立場からお伝えします。
「在宅での看取り」は、特別な人だけのものではありません
「看取り」と聞くと、身構えてしまう方が多いと思います。私自身も、この言葉には重さを感じます。ですが実際には、在宅での看取りとは、大がかりな医療機器に囲まれることでも、家族だけで何もかも背負うことでもありません。住み慣れた家で、いつもの布団や、日の入る窓辺や、仏壇のある部屋で、その人らしい時間を穏やかに過ごしていく——その延長線上にあるものです。
日本では今も、病院で最期を迎える方が最も多いのが実情です。ただ、厚生労働省の統計を見ると、その割合は少しずつ下がり、自宅や施設で最期を迎える方がゆるやかに増えてきています。「家で過ごしたい」という願いが、以前より選びやすくなってきているとも言えます。
私たちがよく出会うのは、こんな場面です
ここで一つ、よくある場面をお話しします。これは特定の誰かの話ではなく、よくある光景です。
ご高齢のお母さんが、娘さんと二人で暮らしています。少しずつ物忘れが増え、言葉数は減りましたが、住み慣れた台所や、朝の光が入る部屋では、今も穏やかな表情を見せてくれます。ここ数か月、食べる量がゆっくりと減ってきました。娘さんは「できるだけ家で過ごさせてあげたい」と願う一方で、遠くに住むきょうだいは「入院させたほうがいいのでは」「家で最期まで、なんて無理じゃないか」と気を揉んでいます。
同じ家族の中でも、毎日そばで見ている人と、たまに会う人とでは、見えている景色が違います。この温度差そのものが、多くのご家庭に共通する悩みどころです。
食が細くなるのは、自然な経過のこともあります
ご家族が最もつらく感じるのが、「食べてくれない」という場面です。「食べないと弱ってしまう」という思いから、つい一口でもと勧めたくなります。そのお気持ちは、とても自然なものです。
一方で、人生の最終段階が近づくと、体が以前ほど多くの食事や水分を必要としなくなり、自然と食が細くなっていくことがあります。緩和ケアに携わる医師も、この時期に無理に食べてもらおうとすると、かえってむせ込みや誤嚥、吐き気や不快感につながることがあると指摘しています。「食べさせられない自分を責めてしまう」——そんなご家族の声を、私たちも何度も聞いてきました。
大切なのは、その変化が自然な経過なのか、別の原因があるのかを、ご家族だけで判断しないことです。気になる変化があれば、かかりつけ医や訪問看護に、そのまま伝えてください。食べる量や回数、むせの有無など、気づいたことをそのまま教えていただくだけで十分です。点滴や栄養の取り方をどうするかも、ご本人の希望と体の状態を一緒に見ながら、相談して決めていくことができます。
「家で」を支えるしくみがあります
「家で最期まで」と聞くと、家族だけで24時間ずっと見ていなければならないように感じるかもしれません。けれど、在宅での療養を支えるしくみは、家族一人の肩にすべてを乗せるためのものではありません。
往診してくれる医師、訪問看護、介護のヘルパー、ケアマネジャーといった専門職が、それぞれの役割で関わります。夜間や急な変化に備えて、電話で相談できる体制をとっている事業所もあります。こうした多職種の連携があることを知っておくと、「全部を自分でやらなければ」という重圧が、少し軽くなるはずです。まずは担当のケアマネジャーや、かかりつけの訪問看護に、どんな支えがあるのかを聞いてみることをおすすめします。
お盆は、話し始める良いきっかけになります
家族が顔をそろえるお盆は、ふだん切り出しにくい話をするのに、実はちょうどよい時期です。厚生労働省は、もしものときにどんな医療やケアを望むかを、本人・家族・医療や介護の人たちで前もって繰り返し話し合っておくことを、「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」という愛称で呼びかけています。
とはいえ、「最期をどうする」といきなり切り出すのは、誰にとってもつらいものです。かしこまった話し合いにする必要はありません。お茶を飲みながら「昔、どんな暮らしが好きだった?」「入院より家がいい?」と、軽く聞いてみるくらいで十分です。一度で決めきろうとしないことが、むしろ大切だと言われています。
この帰省で、さりげなく確認したいこと
次の帰省や面会のときに、印刷して持っておくと役立つ、確認の目安です。答えを出すためではなく、様子に気づき、話すきっかけにするためのものです。
- 食事の量や回数、むせが増えていないか
- 体重が減っていないか(服のサイズ感、顔つきの変化)
- 歩き方や立ち上がりに、以前との違いがないか
- 薬をきちんと飲めているか、飲み忘れが増えていないか
- 夜、眠れているか。日中うとうとしていないか
- 本人が「これからどう過ごしたいか」を、少しでも口にしたことがあるか
- 毎日支えている家族が、疲れをためこんでいないか
まとめ
在宅での看取りは、特別な誰かのためのものではなく、住み慣れた家で穏やかに過ごす時間の延長にあります。食が細くなるのは自然な経過のこともあり、家で過ごすことは家族だけで背負うものでもありません。お盆で顔を合わせるこの時期に、答えを急がず、まずは気持ちを聞いてみる。その一歩から始めていただければと思います。
ご相談ください(相談は無料です)
「これって相談していいことなのかな」と迷うくらいのことこそ、気軽に声をかけてください。ご相談は無料で、契約や訪問を前提とするものではありません。いまの様子(食事の内容や回数、気になる変化など)を、そのまま担当のケアマネジャーや当ステーションにお話しください。ご家族と一緒に考えます。
訪問看護ステーション桃李札幌東
電話:011-733-5555
ウェブ:touricare.net
お問い合わせ:https://touricare.net/contact/


