2026年07月15日
札幌もようやく夏らしくなってきました。日中は汗ばむ日が増え、訪問先でも「水分をとりましょうね」という会話が多くなる季節です。ただ、夏に気をつけたいのは熱中症だけではありません。意外と見落とされがちなのが便秘です。訪問看護の現場では、夏になるとお通じの相談が目に見えて増えます。今回は、高齢者の便秘がなぜ夏に悪化しやすいのか、家庭でできるケアと、ご家族が気づいてあげられるサインについてお話しします。
なぜ夏に高齢者の便秘が悪化しやすいのか
高齢になると、腸の動き(ぜん動運動といいます)や、排便のときに使うお腹の筋力が少しずつ落ちてきます。食事の量が減ったり、外出が減って体を動かす機会が少なくなったりすることも重なって、若い頃より便秘になりやすい状態になります。実際、65歳を過ぎると便秘に悩む方の割合はぐっと増えることが知られています。
そこに夏が加わると、汗をかいて体の水分が失われ、便が硬くなりやすくなります。しかも高齢の方は喉の渇きを感じにくくなっているため、ご本人も気づかないうちに水分が足りていない「かくれ脱水」の状態になっていることがあります。エアコンの効いた部屋で過ごしていても、汗は意外とかいているものです。
私たちがよく出会う場面
私たちが訪問先でよく出会うのは、こんな場面です。特定のどなたかの話ではなく、よくある光景としてお読みください。
日中をお一人で過ごされている方。訪問した看護師が「お通じは出ていますか」と伺うと「出てるよ」と答えてくださるのですが、よくよく確認すると、いつ出たのかご本人もはっきり覚えていない。お腹を触らせていただくと張りがあり、食欲もいつもより落ちている。実は数日出ていなかった、ということが分かります。
こうしたときに役立つのが、記憶ではなく記録で分かるようにしておくことです。トイレに小さなカレンダーを貼って、お通じがあった日に印をつける。それだけで「3日出ていない」が誰の目にも分かるようになります。水分は、一度にたくさん飲むと気持ち悪くなるという方が少なくないので、湯のみ半分くらいの量を、回数を分けて。それでも出ないときは、市販薬で何とかしようとせず、主治医や訪問看護師に相談してみてください。排便のリズムが戻ってくると、食欲も表情も戻ってくることが多いのです。
ここでお伝えしたいのは、ご本人の「出てるよ」を責めないことです。覚えていないのは自然なことです。責めるのではなく、思い出さなくても分かる仕組みをつくるのが、長続きのコツだと感じています。
家庭でできる便秘ケアの基本
特別なことをする必要はありません。基本は次の4つです。
水分はこまめに、少しずつ。喉が渇く前に飲むのがポイントです。飲み物からとる量の目安は1日およそ1.2リットルといわれますが、心臓や腎臓のご病気で水分を制限されている方は、必ず主治医の指示を優先してください。
食事を抜かない。特に朝食は、腸が動き出すスイッチになります。野菜や海藻、きのこなどの食物繊維、ヨーグルトなどの発酵食品もとれるとよいのですが、まずは「3食たべる」ことが先です。
体を動かす。散歩でなくてもかまいません。座ったまま足踏みをする、お腹を「の」の字にやさしくさする。それだけでも腸へのよい刺激になります。
排便を見える化する。カレンダーに印をつける、ご家族がノートに書く。方法は何でもよいので、「いつ出たか」が分かるようにしておくことが、早めの対応につながります。
こんなときは早めに相談・受診を
3〜4日以上お通じがなく、お腹の張りや食欲の低下がある。そんなときは、かかりつけ医や訪問看護師に相談してください。
また、強い腹痛、繰り返す嘔吐、血便、発熱を伴う場合は、単なる便秘ではない病気が隠れていることがあります。ためらわず早めに受診してください。
もう一つ大事なことがあります。市販の便秘薬や座薬を、自己判断で増やしたり減らしたりしないことです。便秘のお薬には、体に合った種類と量があります。効きが悪いと感じたら、量を増やす前に主治医や薬剤師に相談してください。
離れて暮らすご家族へ 面会や電話で使えるチェックリスト
お盆の帰省や面会、ふだんの電話のときに、さりげなく確認してみてください。印刷して冷蔵庫に貼っておける簡単なものです。
- 「お通じ出てる?」への答えが曖昧になっていないか
- お腹が張っていないか、食欲が落ちていないか
- 飲み物がすぐ手の届く場所に置いてあるか
- 冷蔵庫に飲み物や果物、ヨーグルトなどがあるか
- 便秘薬や座薬が急に減っていないか(使いすぎのサイン)
- トイレにこもる時間が長くなっていないか
ひとつでも気になることがあれば、ケアマネジャーさんや訪問看護師に伝えてみてください。
まとめ 便秘は「よくあること」で済ませない
便秘は「歳のせい」「よくあること」と放っておかれがちですが、高齢の方にとっては食欲や体力、毎日の気分にまで直結する問題です。夏は特に悪化しやすい季節ですから、水分・食事・見える化を意識して、早め早めに手を打っていきましょう。
気になることがあれば、気軽に声をかけてください。いまの状態(お通じの回数、食事の内容、飲んでいるお薬)をそのまま教えていただければ、一緒に考えます。相談は無料で、契約や訪問を前提としたものではありません。
訪問看護ステーション桃李札幌東(札幌市東区)
電話 011-214-9231 / touricare.net


